ここ中津川では米粉で作った竿ものの蒸し菓子のことを「からすみ」と言い、かつては桃の節句には各家庭で作られていました。富士山の形の雛菓子が、今では中津川の銘菓になりました。

●珍味の「からすみ」とお菓子の「からすみ」の深〜い関係
珍味のからすみは中東あたりが発祥で、シルクロードを通って唐(中国)に伝わり、そして日本へやってきました。形が唐で作られる良質な墨に似ているので「唐墨(からすみ)」と呼ばれるようになったといわれています。ボラの卵巣の一腹を加工したからすみはそれを一対(男女)と見立てられ、いつまでも仲睦まじく、そして子宝(卵)の縁起物とされていました。
親の願いがこもった中津川のからすみ
 中津川のからすみの名前の由来は諸説ありますが、「子宝」「子孫繁栄」を願い、桃の節句には縁起の良い「からすみ」に似せたお菓子を作り、「からすみ」と呼んだというのが有力な説です。
 海から遠い中津川では、昔はなかなか新鮮な海の幸を手に入れることができず、中山道や飯田街道から運ばれてくる海産物といえば、ひものや塩漬けでした。その中でもからすみは高級品で、庶民には手の届くものではありませんでした。桃の節句にはせめてからすみに似たものを供え、わが子の健やかな成長と幸せを願ったといわれています。

●からすみ型から富士山の形へ
 からすみの一番の特徴と言えばその形。からすみは必ず富士山の形をしています。家庭で作る場合も必ず富士山の形の木型を使います。お団子のタネと同じ材料のからすみ。珍味のからすみの形にするのには、かなり手間ひまがかかったと思われます。そこで、東濃一帯に住む木地師たちが、からすみの木型を作ったといわれています。
 では、なぜ富士山の形になったのでしょう。この富士の形にも子供を思う気持ちが表れており、日本で一番美しくて一番高い富士山にあやかって、わが子が一番幸せになるようにという願いが込められているのです。

中津川のからすみ中でもおいしいと評判の「湯舟沢レディース」さんに、作り方を教えていただきました。代表者の洞田梅子さんは、「ふるさとくらしの大使のからすみ大使」をつとめています。

米粉1kgに対して同量の熱湯を加え、粉をまとめる(約7本分)
ドーナツ状に丸めて蒸す(20分ほど)


くるみやよもぎ、黒砂糖など、好みの味のものを混ぜる。
蒸し上がったら餅つき機で10回ほどつき、砂糖750gを数回に分けながら加えて混ぜる。

1本250gに分けて棒状にし、型にいれる。

型から外し約15分間蒸す


包装すれば出来上がり!

湯舟沢レディースの代表 洞田梅子さんに、からすみにまつわるお話をたくさん教えていただきました。梅田さんは「ふるさとくらしの大使のからすみ大使」をつとめています。郷土のお菓子からすみを広め、子供たちの代にも伝えていくよう、さまざまな活動をされています。

「おひな様見〜せて」
この地方のおひな様はひと月遅れの4月3日。昔は4月3日になると子どもたちは「おひな様みーせて」と言いながら、おひな様が飾ってあるお家を回り、からすみをもらったものです。
「固いからすみ」
今では柔らかいからすみを好まれる方が多いようですが、本来からすみは固いものでした。固いからすみを焼いて食べると香ばしくなります。

「くず米をおいしく」
湯舟沢レディースで作るからすみは、コシヒカリの一等米を使っていますが、昔はくず米を粉にしたもので作られていました。砂糖で味をつけ、くずの米をおいしく頂くための昔の人の知恵ですね。

湯舟沢レディースの“からすみ”はここで。

湯舟沢レディース直売所 
場 所/クアリゾート湯舟沢温泉館前
電 話/0573-69-5177 
営業日/1・8月を除く毎週土曜、日曜 
    9:30〜14:00

 直売所では、からすみのほかももゼリー、栗おこわ、ほうばもち、ほうば寿司など、季節の郷土食や野菜、花など、湯舟沢レディースで作られたものを買うことができます。どれも中津川の神坂地区で生産された、お母さんたちの手作りです。特にからすみとももゼリーは手作り加工推奨品に認定されるお墨付き。春には桜、夏にはわさびやシソなど、旬の味のからすみも作っているそうです。

もともとは家庭の味だったからすみ。今では有名和菓子店でも製造販売されています。
▲満天星一休(苗木)
▲信玄堂(手賀野店)
▲七福
▲佐和屋(からすみ専門店)