1.生態学的鑑別
(1)発生場所

  1. 地上
    • 独立(地中の有機物が栄養源)
    • 樹下及びその周辺(菌根により樹木の生根から栄養を摂取)
  2. 木材の表面
    • 生きた樹木
    • 枯木、倒木、伐採根(株)
    • 木製工作物、建築物
  3. 動物の排せつ物、堆肥
  4. 昆虫、クモ類に寄生
(2)発生樹林

  1. 針葉樹林
  2. 落葉広葉樹林
  3. 常緑広葉樹林
  4. 特定樹林(特定の菌と寄生関係にある)
    • アカマツ
    • カバノキ
    • ブナ
(3)発生形態

  1. 単生(独立発生)
  2. 散生(一区画にまとまって発生)
  3. 群生(地上、樹上に密生)
  4. 叢生(群生よりさらに高密度に発生)
  5. 列生(直線、菌輪を形成)
  6. 束生(株を形成)
2.形態学的鑑別
(1)肉眼による鑑別

  1. 傘(カサ)
    • 大きさ
    • 形態(山笠、円錐、水平、漏斗型)
    • 色彩
    • 表明構造(イボ)
  2. 柄(エ)
    • 長さ
    • 色彩
    • 形態(ツボ、ツバ)
    • 充実性
  3. ヒダ
    • 柄との関係(垂生、直生、上生、湾生、離生、隔生)
    • 色彩
    • 密度
(2)胞子紋

 胞子の色はキノコの分類にきわめて重要である。


(作成法)

 傘から柄を切り放し、ヒダ側(子実層部)を下にし、白紙又はろ紙にのせ、数時間放置。(水分を蒸発防ぐための措置が必要)


(3)顕微鏡による鑑別

 キノコの種類により胞子の形態が異なり、分類上重要である。
  胞子

  1. 大きさ
  2. 形態
  3. 表明構造
3.理化学的鑑別
1.グアヤクチンキ・硫酸バニリン法

(1)試薬

  1. A液:グアヤクチンキ
    グアヤク脂1gに70%エチルアルコール5mlを加え、よく溶けるまで撹拌する。溶けにくいが完全に溶かすことが重要である。
    調整後の色・・・・チョコレート色
    有効保存期間・・・2〜3ヶ月
  2. B液:硫酸バニリン
    純水3mlに濃硫酸8mlを加え11mlとし、そこへバニリン1gを加え溶かす。溶けやすいが混濁しないように色の変化に注意する。
    調整後の色……淡黄色(透明)
    有効保存期間…10日間
(2)手順
  1. 試料採取 :採取日から2日以内のもの(冷凍でも可)
  2. 切  断 :茎と肉の断面及びヒダの面
  3. 試薬塗布 :2〜3滴塗布(約1〜2mlで 十分である)
  4. 反  応 :A液は5分後、B液は塗布直後
  5. 判定・鑑別:反応時間経過後に固有の呈色を観察
(3)鑑別法
クサウラベニタケ(毒)とウラベニホテイシメジ(食)
試薬クサウラベニタケ(毒)ウラベニホテイシメジ(食)
A液緑色反応しない
B液反応しない赤紫色
カキシメジ(毒)とチャナメツムタケ(食)
試薬カキシメジ(毒)チャナメツムタケ(食)
A液青緑色反応しない
B液紫色反応しない
ツキヨタケ(毒)とムキタケ(食)
試薬ツキヨタケ(毒)ムキタケ(食)
A液反応しない青緑色
B液反応しない鮮赤紫色

 以上(引用文献)大木正行ほか:食品研究36.(1).95(1986)

2.3%水酸化カリウム法

(1)試薬
3%水酸化カリウム(KOH)溶液水酸化カリウム3gに純水97mlを加え、よく溶けるまで撹拌する。
調整後の色・・・無色(透明)
(2)手順

  1. 試料採取:採取日から2日以内のもの(冷凍でも可)
  2. 試薬塗布:傘に2〜3滴塗布する(約1〜2mlで十分である)
  3. 反  応:約1分後
  4. 判定・鑑別:反応時間経過後に固有の呈色を観察 (3)鑑別法

ドクツルタケ(毒)とシロマツタケモドキ(食)
試薬ドクツルタケ(毒)シロマツタケモドキ(食)
3%KOH溶液黄色反応しない
ドクツルタケ(毒)とその他のきのこ(食)
試薬ドクツルタケ(毒)その他のきのこ(食)
3%KOH溶液黄色反応しない
(4)注意点
3%水酸化カリウム法はドクツルタケ特有の反応であり、ドクツルタケ以外のキノコはすべて反応しないため、反応しないことが食用であることを示すものではない。


●協力機関・団体(順不同)
恵那峡国際ホテル    恵那市 商工観光課   恵那市たんぽぽ作業所
恵那食品衛生協会    岐阜県林業センター   岐阜県多治見保健所
岐阜県保健環境研究所  岐阜薬科大学      小いた園
鷹見旅館        東濃魚菜(株)     中津川市 商業観光課
蛭川村 企画商工課   八百健市場(株)    愛知県林業センター
富士カントリーひるかわゴルフ場
●協力者(五十音順)
伊 沢 正 名     井 戸 好 美     大 島 晴 憲
大 前 秀 樹     岡 田   修     木 方   正
佐々木 義 輝     佐 藤 篤 史     柴 田 健 夫
田 口 雅 人     吉 田   勲     吉 田 友 助
●参考文献
「きのこ健康法」          清水桂一著              グリーンアロー社
「中国の薬用菌類」         劉波著、難波恒雄・布目慎勇訳          自然社
「中国本草図録」          培根主編                  中央公論社
「マンネンタケの栽培と薬効」    菊地千代治著                菊研出版部
「自然観察図鑑 きのこ狩りの極意書」生出智哉・井口潔著               山海堂
「四季のきのこカラー百科」     畠山陽一著                 RW通信社
「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」  今関六也・大谷吉雄・本郷次雄著       山と渓谷社
「ふるさときのこ考」        恵那食品衛生協会          (有)たけかわ企画
「舞茸の代替療法域」        難波宏影著                  菜根出版
「キノコ狩りガイドブック」     伊沢正名・川嶋健市共著            永岡書店
「きのこ狩りの本」         飯田浩著                  日本交通社
「からだに効くきのこパワー」                         主婦と生活社
「キノコの化学・生化学」      水野宅・小倉正允編著         学会出版センター
「調理用語辞典」          (社)全国調理師養成施設協会編 (株)調理栄養教育公社