それでは、霧しなそばの正統派盛り方についてご説明いたしましょう。しかし延々と「そば屋さんの洗い方、盛り方」についてお話いたしましたので、冷たくしてお召しあがる時には基本的にはできる限り条件をこれに近付けるようにしていただけたらと存じます。ただし、当然いろいろ制約もございますのでそこは工夫のしどころ。道具は違えども要はその心意気、ちょっと『にわかそば屋』を気取って手際も鮮やかに「もりそば一丁」っていうのはいかがですか。
さてまず用意しなければならないのはすくうザル。そば屋さんでの「あげざる」に相当するものです。一番良いのは鍋のサイズにぴったりあって、一度にすべてのそばがすくえるものですがここはひとつ我慢して、柄がついた小ぶりのザルを準備しましょう。ここで絶対して欲しくないことは「茹で湯をすててしまうこと」せっかくのそば湯が台無しになってしまいます。だから鍋からそばをすくう発想でいきましょう。
そしてこのそばをもっと深めの大きなザルに移して「面水」をかけて荒熱をとります。これはどんな家庭でも心掛けひとつでできるもの、茹で上げ直後はそばがとても切れやすくなっているので、まずはきれいな冷たい水でしめてしっかりさせましょう。そしてそばを移した大きめのザルがすっぽり入るボールか桶に氷水を張り、このザルを浸してそばを洗います。このときも決してゴシゴシ洗うのではなく、両手で揉むようにやさしくぬめりをとっていきます。ここで氷水を用意しておくことが最大のポイントです。そして最後に「化粧水」をかけてきれいにしてからいよいよチョボにとっていきます。動作は、素早くしかもそばにはやさしく、やさしく。
これには「ためざる」に変わる平べったいザルが必要になります。左手にこのザルを持ち、化粧水をかけたそばを深めのザルから右手で少しずつつまんでは左手のザルの縁に円を描くようにおいていきます。この時には一度にたくさんのそばをつままないように、あくまでもチョボですからポソッと盛っていきます。ベチャベチャのそばの水を切るのがこの作業の目的ですから、チョボにとったそばが軽く水が切れて表面がツヤツヤ光っているような状態が望ましいところです。
いよいよ最後の盛り付けの段階です。ご家庭にきちんとした塗りの「せいろ」があれば申し分ないのですが、なかなかそうはいかないもの。とりあえず盛り付け用のザル(友の会に毎回ついてくるザルはいかがですか?)を用意して、これに先程とったチョボをザルの大きさに応じておいていきます。普通は三つ山か四つ山が適当でしょう。これをまた手で軽く持ち上げてならし、平らにしていきます。口伝のように「蠅が通れるように」盛れたら大成功。あとは素早く食べるだけです。さあ、家族に自慢しながら召し上がれ。