奥義 霧しな流 そばの道
奥義 霧しな流 そばの道


第4章◆もう一歩本格的に自分でそばつゆをあつらえる
返しの作り方

 先ほど説明しました通り、返しには本返しと生返しがあります。本返しは醤油、砂糖を煮立てて自然に冷ますのに対し、生返しは加熱しないでも砂糖が溶けるように予めガムシロップ状にして醤油と合わせるのです。本返しは加熱して砂糖と合わせる為、醤油とのなじみがよく、一方生返しは醤油に熱を加えないため醤油の香りが本返しより強く“冷たい辛さ”が表現できると言った特徴がそれぞれにあるようです。さて今回霧しなでは本返しでやってみようと思います。返しはつくってすぐは使えません。最低でも2〜3日、できれば1週間位ねかせてください。長くねかせれば味がなじんで、まろやかになりますから、前もって仕込んでおくと良いでしょう。

●用意する道具

  • 鍋(大きいもの) 1個
  • 温度計 1本
  • たま杓子 1本
  • ボウル 1個
  • 落とし蓋(あれば)

●材料の目安

  • 醤油 500cc(注意!最近の醤油にはアルコールやブドウ糖など甘みを加えたものが出回っていますがあくまで大豆と小麦と食塩の昔ながらの本醸造の醤油をご用意下さい。あとできれば濃口醤油を使うようにして下さい。)
  • 砂糖 100g
  • みりん 50cc

●手順

  1. 鍋に醤油を全部入れます。醤油の泡がおさまるのを待って、火をつけます。火力は中火にしてください。
  2. 温まると次第に泡というかアクのようなものが醤油の表面に出てきますが、これはそのままにしておきます。
  3. 醤油の温度が80℃になったところで砂糖を全部加えます。
  4. たま杓子を使って砂糖が溶けるまで丁寧に静かにかきまぜます。(注意!絶対に醤油を煮立たせないでください。醤油が焦げるとせっかくのつゆに焦げた臭いがついてそばの風味を味わうどころではなくなってしまいます。)
  5. 砂糖が溶けきったら火を弱めて、表面を落ち着かせます。
  6. 次にみりんを加えてまたかき混ぜます。
  7. 弱火にしてしばらくそのままにしておきますと、表面が次第に泡で覆われてきます。
  8. そしてこの表面の泡が一部破れて、中のつゆが見えるようになったら火を止めます。
  9. たま杓子か落とし蓋でアクをきれいにとります。
  10. 自然に冷まします。
  11. 冷めたらボウルに移し、布巾で覆って約1週間、冷暗所でねかせます。

 難しそうに見えても要は醤油を80℃まで熱して、砂糖とみりんを溶かし、このアクをとって冷ませばよいのです。この返しは江戸時代には「八方汁」とも呼ばれていまして、だしとの薄める度合いを変えれば煮物にも天つゆにもお吸いものにも使える万能の味の素ですので、一度是非チャレンジしてみてはいかがでしょう。またここで紹介した砂糖の量はあくまで目安ですので、お好みの甘さに応じて50g位は上下調節されたらよいと思います。また、砂糖についてもご自分の味を追求なさるならば、上白糖でなくザラメ、氷砂糖、赤砂糖などいろいろ試してみるのも良いでしょう。作り方も比較的単純でだいたいまずまずの味のができますが「うまいまずいは紙一重」ともいいますから、奥は深いですよ。なにはともあれまずは一度お試しを。LET'S TRY。

ページトップへ