奥義 霧しな流 そばの道
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第4章◆もう一歩本格的に自分でそばつゆをあつらえる
だしの取り方

 ご自分で本返しを仕込んで1週間たち…。さあつぎはいよいよだしをとってあわせつゆを完成させる段階。ですがちょっと待って、その前におそば屋さんでのだしの取り方について少々お勉強させてください。
 関東風のそば屋でのだしの取り方が、長時間だしを「煮詰めて取る」という方法に対して、関西風のそば屋あるいは料理屋風のだしの取り方はサッと「引く」といった方法をとるというのが一般的な考え方です。この違いは使用する削り節の厚さによってうまれるのです。つまり関東風のそば屋では厚削りにした節を使うことによって、節のうまみ成分を徐々に抽出し、だしの濃度を高めると同時に、長時間沸騰させて水分をどんどん蒸発させることによってだしを濃縮しているのです。一方、関西風のそば屋では「吸い物だし」の要領で花かつおをサッと湯に通す程度であげて、香りを楽しむといった風情なのでしょう。
 ではなぜ関東ではこのようなだしの取り方になったのでしょうか。1番の理由は関東ではカビ付けを施した『枯節』がもっぱら用いられるからです。ここで節類の話になりますとまた紙面が足りませんので簡単に説明しますと、枯節はカビ付けを施すことによって節の中の水分を芯から吸い上げて蒸発させうまみを閉じ込め、また滲みでてくる脂肪を分解することで脂焼けや魚臭さを防ぐといった効果をねらったたいへん高級な節なのですが、このうまみ成分を余すことなく抽出するのは大変な事なのです。その手の込んだ枯節のうまみ成分を最高に引き出すために長い年月をかけて辿りついたのが、現在の方法といってよいのでしょう。お店によっては2時間も煮詰めるところもありますし、水分も60%も飛ばしてしまう店もあるというのですからこんなだしを作ろうっていうのは素人にはちょっと無理ですよね。だからそば屋のそばつゆはおいしいともいえるのでしょうね。
 さあそれではいよいよ、ご自分でだしをとっていただく番です。ここでは先程ご説明した関東風の方法と関西風の方法、両方をご紹介いたしましょう。

◇関東風のだしの取り方◇

◆用意する道具◆

  • 寸銅(10リットル位はいる大きな物がベスト)
  • だし汁を漉すときに受ける容器(普通は鍋)
  • 味噌漉し(やや大きめのもの)
  • 漉し布

◆材料の目安◆

  • 水 8リットル(できればこの水にもこだわってみたいですよね。)
  • 鰹節 400〜500g(枯節が手にはいればそれはもう最高、厚さは0.5〜1mm以上の厚さに削ったものが必要です。)
  1. まず寸胴鍋に8リットルの水をいれて沸騰させます。(注意!この時鍋はガスの真上に置かずにずらして、鍋の底3分の1位が火に当たるようにします。そしてお湯が寸胴の中で自然に対流するようにしておきます。)
  2. そこへ鰹節をほぐしながら入れ、鍋の底に鰹節が固まらないように、全体を「玉を転がすように」回る火加減に調節しそのまま40分程煮続けます。
    本当に良い鰹節ならばこの時にもアクなどでないといわれるのですが、でたら取り除いてやって下さい。
  3. 40分も煮詰めますと5リットル位になっていますから、ここで予め用意しておいた漉し器でダシガラを漉し去ってできあがりです。

◇関西風のというより家庭での簡便法◇

◆用意する道具◆

  • 関東風の取り方といっしょです。

◆材料の目安◆

  • 水 1.8リットル
  • 鰹節 900g(薄く削ったもの)
  1. 鍋に1.8リットルを煮立たせます。
  2. 削った鰹節を入れ、火を弱めます。
  3. 5分ほど煮詰めて、その間にでてきたアクは丁寧に取り除きます。
  4. だしを漉し器で漉してハイできあがりです。

 こちらのほうはあっけないほど簡単でしょう。最初はこちらの方からだしの取り方に徐々になじんでいって、満足できなくなったらいよいよ次のステップとして煮詰める方法にチャレンジしてみるというのが良いのではないでしょうか。また今回はだしとりに鰹節だけを使いましたが、鯖節、宗田節、あるいは煮干し、干ししいたけ、昆布などをいろいろブレンドしてみてご自分だけの味を作り上げるなんて、考えただけでもワクワクしませんか?



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