ご自分で本返しを仕込んで1週間たち…。さあつぎはいよいよだしをとってあわせつゆを完成させる段階。ですがちょっと待って、その前におそば屋さんでのだしの取り方について少々お勉強させてください。
関東風のそば屋でのだしの取り方が、長時間だしを「煮詰めて取る」という方法に対して、関西風のそば屋あるいは料理屋風のだしの取り方はサッと「引く」といった方法をとるというのが一般的な考え方です。この違いは使用する削り節の厚さによってうまれるのです。つまり関東風のそば屋では厚削りにした節を使うことによって、節のうまみ成分を徐々に抽出し、だしの濃度を高めると同時に、長時間沸騰させて水分をどんどん蒸発させることによってだしを濃縮しているのです。一方、関西風のそば屋では「吸い物だし」の要領で花かつおをサッと湯に通す程度であげて、香りを楽しむといった風情なのでしょう。
ではなぜ関東ではこのようなだしの取り方になったのでしょうか。1番の理由は関東ではカビ付けを施した『枯節』がもっぱら用いられるからです。ここで節類の話になりますとまた紙面が足りませんので簡単に説明しますと、枯節はカビ付けを施すことによって節の中の水分を芯から吸い上げて蒸発させうまみを閉じ込め、また滲みでてくる脂肪を分解することで脂焼けや魚臭さを防ぐといった効果をねらったたいへん高級な節なのですが、このうまみ成分を余すことなく抽出するのは大変な事なのです。その手の込んだ枯節のうまみ成分を最高に引き出すために長い年月をかけて辿りついたのが、現在の方法といってよいのでしょう。お店によっては2時間も煮詰めるところもありますし、水分も60%も飛ばしてしまう店もあるというのですからこんなだしを作ろうっていうのは素人にはちょっと無理ですよね。だからそば屋のそばつゆはおいしいともいえるのでしょうね。
さあそれではいよいよ、ご自分でだしをとっていただく番です。ここでは先程ご説明した関東風の方法と関西風の方法、両方をご紹介いたしましょう。