茄子川

 なすびがわちゅうとこはなあ、昔から、なすびをぎょうさんつくっとるとこで、どこみても、なすびの畑ばっかりじゃったと。
 あるときな、えらいとのさまが死なしたもんやで、
「大きい声出したり、なりものをならいちゃいかん。」
いって、おふれが出たと。
 昔はなあ、えらい人が死なしたりすると、でかい声で歌うたってさわいだりすると、しかられたもんじゃ。おとなしょうしとらにゃならなんだもんじゃ。
 そいで、そういうおふれが出た。
 ところがな、村のひとんたあは、なりものをならいちゃいかん ということを、木になるものをならいちゃいかん、とききちがいしてな、村中になっとるなすびを、みんなちぎって 川へふてちまったと。
 そやもんで、川はなすびでうまっちまったげな。
 お役人がみにきて、
「こりゃ、なすびの川じゃ。」
てって、たまげたそうな。
 そいから、この村をなすび川ってよぶようになったちゅうこっちゃ。

文・丸山 才一
絵・高橋 錦子

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