一月一日 元日行事 若水汲み |
其の家の、家長(男)が朝起きをし、その家々の水元(井戸)で若水を汲み、その若水で湯をわかす。湯をわかすのには、「マメ」に息災になるように、豆がらをもやした火を用いた。又若水をむかえるところ(井戸)へは一升枡に米を二合ほど入れ鏡餅と田作を供える。 家内中揃って其の年の干支方向に向って、家内安全、商売繁盛を祈願する。干柿、栗、大豆、榧の実、田作で、マメ(豆)でクリクリ(栗)活気(柿)でがやがや(榧)と言う、縁起で、これらのもので歯がためをし、お茶を飲む。 |
雑煮 | 雑煮は、むかえた若水を用いて炊く。東濃地方の雑煮は餅を焼いて入れる家と、ゆでて入れる家があるが、しょうゆ仕立てで、ほうれん草、豆腐、鶏肉、椎茸などの具を用いる。勝つようにとの縁起で、けずりかつおをふりかける。 |
屠蘇 | 雑煮を食べる前に、家族そろって屠蘇を飲む。其の場合、屠蘇、雑煮を仏壇、神棚へそなえるのは、当然である。 屠蘇とは、もとは草の名前で、中国の孫思●(ソンシバク)の庵号が元で屠蘇は彼の発明したものという屠蘇散をひたした酒、みりん、これを飲めば、一年中の邪気を払うと云われる。 |
一月二日 仕事始め |
とろろ芋で作ったとろろ汁を、めしにかけてたべる。かき込むように収入を願っての、行事である。書初をする日でもある。 |
一月七日 七草がゆ |
七草、せり、なずな、ごぎょう、はこべ、すずな、すずしろ、ほとけのざ。これを入れたおかゆをたべると万病にかからないと云われた。 |
一月十日 家ぎとう お日待ち |
榊を切って来て、神主に幣束を切ってもらい、神棚に向って祈祷をし、家の周囲を祓い清め、家族の無病息災を祈願する。 地方によっては、氏神神社に集まって行うところと、神主に家に来てもらって祈願する家々がある。現在ではお日待ちと、家祈祷と一緒に行っている所が多い。 |
一月十一日 蔵開き |
この日までは、蔵へ入ってはならないとされていて、初めてこの日に蔵を開く。 |
鏡開き | 御鏡餅を、汁粉で食べるのもこの日である。 |
一月十三日 小正月 餅つき |
此の日は小正月の餅つきをする。搗いた餅で、花もち(稲穂を形どって餅をサイの目に切り、竹枝に稲穂のようにさす)又、まゆ玉(びんかの木にまゆ玉そっくりの餅を形どり、刺す)これを、大黒柱にゆわえて、米とまゆの豊作を祈る。 |
一月十四日 小正月 |
暮の年取りより、やや簡単に年取りをする。寒もちを搗く家もある。 |
左義長 | 左義長(ドンド焼)と云って、一月三日迄立てた門松を四日の早朝、子供たちが集めて、あき地やたんぼに門松で小屋がけをして、四日からこの日まで、小屋の中で餅を焼いたりして遊ぶ。夜になると、他地区の小屋から、門松等をかっぱらいに行ったものである。地方によっては、四日の早朝にどんど焼きを行う所もある。其の時、前年度の「おふだ」、二日に書いた書初めなどもその火で焼く。其の時炎で書き初めが高く舞い上がると縁起が良いと言われた。門松で焼いた餅を食べると夏まけを防ぎ、無病息災であると言われている。又、門松の燃えかすを持帰り、屋根の上に投げ上げておくと、火災難を防ぐと言われている。 |
一月十五日 十五日正月 |
十五日正月で、此の日は仕事を休む。 |
小豆がゆ | 小豆がゆを作り、柿の木に向って兄や姉が「なるか、ならないか」と、大きな声で呼びかけると、弟や妹が、「なります、なります」と答えながら、柿の木の元へ供える。 所によっては、兄や姉が鉈を持って居て、柿の木にきずをつけ弟や妹が答えながら、そのきず口へ小豆がゆをはさむ。此の時期が施肥が最も良い時期とされている。 |
一月十六日 藪入り |
お嫁さんが正月を済まし、休養を兼ね、新年初めて実家へ帰る。 |
一月二十日 二十日正月 |
十四日に飾った花もち、まゆ玉を枝からとり、つぶあんで煮て食べる。 |
旧暦の正月 | 道具の年取りとも云われ、農具、裁縫道具にお供えを供えて、この日は仕事を休む。 |
節分 | 立春の一日前に節分の年取りをする。此の年取りは、武士や業種に依って、朝食(先を取る)、昼食(中を取る)、夕食(あとを取る)と言う事で、武士や商人は先を取る。 農家はあとを取る、などである。又、節分の豆を炒る。(あせぼの火で炒ったり、あせぼの枝で豆をかきまぜたりする。) 節分、短冊紙に鬼の顔を書き、閏年には点々を十二書き、普通年には点々を十三書く。短冊の下の方に星を書き、わりばしに、いわしの頭や尾を刺して、あせぼの木、びんかの木と一緒に表玄関や裏出口にさして鬼や悪魔祓いをする。 閏年や普通年に、違った数の点々を書いておくと鬼が来て、いくら数えいても数が違うので、夜が明けて家の中へ入れず、逃げ帰る。と言われている。又、竹竿に目籠と、糸巻枠をつけて立てておくと、目籠の穴を数えにくいので、その内夜が明けて、悪魔が逃げ帰るとも言われている。 夜は「福は内、鬼は外」と叫びながら豆まきをし、悪魔祓いをする。まいた豆を拾ったり、炒り豆を自分の年の数だけ一回でつかみとると幸せが来るとも云われた。その豆をしまっておいて、初かみなりと時に取り出して食べると、落雷防止になると云われていた。 |
三月三日 桃の節句 |
女の子の成長を願って、雛祭りをする。雛飾りは早目に飾りつけ、片づける時は早目にしまわないと、娘の婚期が遅れると云われている。白酒、草餅、菱餅、からすみ、大根切干の煮物、貝汁、おすし等を作る。女官が海で亡くなられたので、海の物を供える風習も残っている。又、桃の花を白酒に入れて飲む。 |
彼岸 | 春分の日を中心として、各部落協同で彼岸道作り(道路の補修)をする。お墓掃除、お墓参りをする。 ぼた餅を作り、みたま様に供える。 又、親戚や近所にも配る。 |
おんぞ | 女の休日とされ、餡入り餅を作り実家へ帰ってゆっくり休み、針を持たない日とされた。 |
花まつり | 旦那寺へ甘茶を汲みにゆき、その甘茶を味噌に入れると味噌が腐らないと云われている。又、飲んだり、屋敷廻りにまいたりして、無病息災を願う。 |
五月五日 端午の節句 |
一名、菖蒲節句、男の子の節句とも云い、屋根によもぎと菖蒲を飾り蛇よけとする。また風呂に菖蒲とよもぎを入れて入る。又、その菖蒲で、鉢巻をして、入湯すく等に依って無病息災を願う風習がある。 柏餅、ほう葉餅、ちまき等を作り祝うのも、端午の節句である。 男の子のいる家庭では、「こいのぼり」を立てて、鯉の滝のぼりにちなんで成長を願う。 |
春田堀 | 田圃を掘り起し終ると、春田がい餅といって、おはぎを作って労苦をねぎらう。田植をする迄に、春田堀、小切、かい田、しろすりと四回、一鍬一鍬耕たものである。 |
早苗振舞 | 田植の終了を祝い、秋の収穫を願って、田の神様にお神酒、汁物、赤飯などを供える。又、苗三束を洗って、田の神、大黒様へ一年の豊作を祈願し、ほう葉寿司もこの頃よりおいしい時期として作り始める。 |
お盆 | 時期は七月〜九月まで、地方によって種々にある。仏壇から仏様を出して飾り、門口で迎え火を焚いて、お精霊様を迎えて、お盆の期間中は膳立てで供えものをする。 お精霊様を送り出すのには、ナスときうりで馬を作り、供え物と味噌、塩等を背負わせて、流れの強い川に流した。 |
七夕 | 里芋のつゆを硯に取り、そのつゆで墨をすり、短冊に願い事を書いて、笹舟に飾る。 七夕が済むと川へ流したり、秋の野菜の虫よけに畑の隅に差しておく。供え物は、季節の野菜、果物等である。 この頃が天の川(銀河)が一番美しく見える時期で、お星の祭とも云う。 |
七月二十五日 おくわさま |
この頃になると、稲作も成長するので、神社で豊作祈願をする。 二メートル程の大きさの幣束(神が宿るもの)が、隣の家から回って来るので、その幣束を持って、田や畑の作物の上を、祓い清めて、豊作と虫よけを祈願して、次の家へ回してやる。 |
土用丑の日 | 薬草を採取するのに、一番よい時期と云われている。土用餅を食べると夏病みしないと云われる。嫁は土用餅を持って実家へ帰るならわしがあった。昔から夏バテを防ぐ為に土用の丑の日に鰻を食べて栄養の補給を行ったものである。 又、丑の日に、うの字のつく物を食べると良いとも云われて、うめぼし、うしの肉、うどん、うさぎ等である。 |
二百十日 | この頃は台風の季節で、二百二十日を前後に大風の吹くのを恐れて、二百十日前日に、台風よけ祈願をする。 |
二百二十日 | 田の水切りの目途とされ、川、用水路の掃除をした。 此の日も大風よけ祈願をする。 |
彼岸 | 秋分の日を中心に、一週間、おはぎを作り、みたま様、仏様に供える。又、おはぎを重箱に入れ、親類縁者へ持ち歩いて、みたま様や仏様をお参りした。 |
お月見 | 秋の七草、ききょう、はぎ、おみなえし、ふじばかま、かるかや、くずを供え月の出を待つ。 いも名月と云って、里芋がまだ小さいので、米の粉で里芋の形をした物(だんご)を作り、枝豆、栗、ぶどう等、秋の果物と共に供える。その日は、よその作物や果物を取って食べても良いと云われていて、ふんどしに一ぱい取っても良いと云われ、腹ほうじょうと云って無罪放免であった。 |
二十二夜様 | 祈願を掛けて月の出を待つ。それまでは、物を食べたり、座ってはならない。一生一度の祈願をすれば、必ずかなえられると云われる。 |
刈株祝 | 稲刈りが終った時、農具をきれいに洗い清め、芋粥餅を作り(あずきご飯に里芋を入れた軟かめのごはん)、これを五合升に入れて、農具(カマ)に供える。カマ収めとも云う。 |
こばし祝い | 脱穀が済んだ時、おはぎを作り祝って労苦を養う。 |
十一月 山の講 |
旧暦十月十日山の講と云って、甘酒を作り、男衆が山の神に供え、部落の男衆が山の神神社に集り、味飯等を炊いて一日を過ごす。この日は山仕事は禁じられていたし、女が山の神へ行くことも禁じられていた。 |
十二月 冬至 |
一年中で最も日の短い日と云われ、かぼちゃを煮たり、いとこ煮を食べる。 |
ゑびす講 | 左膳で尾頭付きの魚とごはん、小使銭を供えてゑびす大黒に商売繁盛を祈願する。このとき、かきこむと云うことで、とろろ汁をつくる。 |
年の暮 | 正月の餅つき、二十九日をきらって、二十八日、三十日に搗く。一臼餅は搗いてはならないと云われている。 |
大払い | 氏神様でお祓いを受けた幣束を、部落に持ち帰り、家々に回して大祓いをする。 |
松飾り (煤払い) |
一夜松は良くないと云われ、三日四日前に門松迎えをする。門松を立てるくいも、その時一緒に切って帰るが、余るように切ってくる。それは食い余ると云う縁起である。門松は家々に依って異なるが、枝松、そよごである枝松は、一方が三段、もう一方が四段で、それにそよごを加えて立てる。〆縄には裏付、とこ若、幣束等を飾る。 |
十二月三十一日 年取り |
一般的には、朝から年取りの煮物、おせち料理の準備をし、年取りをする。白飯、煮〆、(こんじょ)、お頭付き餅、田作り、干柿、みかん、鏡餅を供える。年神様、蔵神様、ゑびす様、大黒様、荒神様、水神様、産神様、天神様、総家神様、道具神様、みたま様などに供える。 |