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「 正月 」
 この日ばかりは主人が自ら若水をくみ、健康(マメ)である様にと、かねてとっておいた豆殻で湯を沸かす。そのあいだに女房は、それぞれ装いに余念がない。やがて一寸見直す程に変身した女房達に囲まれ、改まって少し厳粛な気持ちにさせられて年中行事が始まる。その年の恵方に向かって、「マメでクリクリカキとる様に」と唱える。
 新しい年の家族の無事と家運の繁栄を、この短い言葉の中に凝縮させて祈念をする。その短い豆と、栗と、柿に置き替えて一同打ち揃って祝い食べる。そこには質素で素朴ながら「家族」という絆や、ぬくもりがあり、それが本来の日本の文化基盤を形成してきた。風俗風習と云うものは、時代を超えて、それなりの意味があるものであり古い因習と片づけてしまうわけにはゆかない。
 核家族時代の中で、せめて正月くらいは先祖に習い一堂に会して、「マメでクリクリカキとる様に」と声を揃えて云ってみたいものである。