「山菜」

04sansai.gif

「 山  菜 」
 残雪を頂いた恵那山は、朝のシルエット、夕べの赤恵那と、いつ眺めても見飽きることがない。そこから流れる河の土手にはもう、”蕗のとう”が覗いていた。いよいよ摘草のシーズンである。”芹””つくし””のびる””嫁菜””小豆菜””蕨””ぜんまい”今では幻の山菜、”牛尾手(シウデ)”味の王者”たらの芽”淡泊で歯ざわりが身上の”うこぎ”香りで食べる”山活独””山椒”皆それぞれに春の気配を食べるものばかりである。
 栽培野菜が丹精された花嫁なら、山菜はおぼこい山娘かな。そこで調理はあまり手を掛けないで、そのままの姿・味を楽しみたい。せいぜい、おしたし・和え物・天婦羅位が望ましいのではないか。
 冬が去り、やがて全てが明るく動き出す。山の熊は冬眠から覚めると先んず蕗のとうをたべて季節を知り、休んでいた胃腸を整えると云う。第一番に春を運んでくる味覚の使者は蕗のとうから始まり、次々登場する山菜達である。

  • たらの芽の すでに摘まれし 雑木山    伊沢崎子