「朴葉ずし」

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「 朴葉ずし 」
 朴の葉の少し銀色を帯びた緑が、ブルーの五月空をキャンパスに重々しい量感で繁る頃になると、女達の朴葉ずし作りが始まる。
 それぞれじまんの”具”を考えるのも亦、生活の中の楽しみの一つである、「筍」「ワラビ」「ゼンマイ」「椎茸」「昆布」「干瓢」「あさり佃煮」「へぼ」「紅鱒」「海老」「ごり」それに金絲卵やえんどうで色を飾る。
 天然の緑の器にもられた色彩と味は、その家の主婦の個性である。頂戴する方も、あれこれと”具”の種類の多い程豪華で一段と楽しいのがこの朴葉ずしである。
 そもそも朴の葉には殺菌作用があり、中身が腐敗し難いことを、先人は長い経験から知っていた。そして若葉に包まれた、さわやかな春の香りは、熱い飯を包みお櫃に入れて軽く押しておく事に依って程よくすしになじんでゆく。衛生的で野手豊かな郷土の味朴葉ずしは、こうして生まれて来た。
 かつては、朴葉ずし作りの為にそれぞれ庭や持山に必ず一本は朴の木を植えたものだと”すし”を包みながらおばあさんが教えてくれた。