「ふろふき」

21furofuki.gif

「 ふろふき 」
 「ふろふき」の語源は文字どうり“風呂”から来ていて、熱風呂と、あまりの熱さにふうふうと息を吹きかけて食べるこの料理と状況が似ているからではないかと思われる。
 “ふろふき”は気配り料理である。材料は大根と味噌だけであるが、それだけに細心の心づかいが必要となる。先づ肌理の細かい方領大根が良く、一本の内どの部分が最も美味かを考える。更に器にも気を配りたい。中味が冷えないように、又若し、ふと器に手が触れた時に温かさが感じられる様に、必ず盛り込む寸前に器を温めたい。温かさが馳走である。“気配り料理”とは隠れた隅々まで自分自身が納得ゆく配慮をする事であり、人にわかってもらえるかどうかは、懸念の外である。
 “ふろふき”は大根に限らず、柿、いちぢく、梨など果物も良い。きれいに皮を剥き、油で揚げてから熱湯で油抜きをした後、吸地でゆっくりと煮上げ味噌をかける。変わりふろふきも時には意外性があって嬉しいものである。

  • 風呂吹は とろ火にあづけ 夜なべ妻   中村金鈴