「つけもの」

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「 つけもの 」
 菊牛蒡・・・中津川は坂と川の町である。どの町筋にも小川があり、恵那山からの豊富な清流が生活の手段として色々に使われていた。かつては十一月になると、そここの小川に竹篭水車が廻り、真白に洗われた山牛蒡が水中で反転しているのを眺めることが出来た。今は無き初冬の風物詩であった。山牛蒡は味噌漬けの外に、薄切りにして、酒で割った醤油に朝漬けして夕方まで待つと、何の外連味もない山牛蒡そのものの風味が食べられてうれしい。紅葉大根・・・「赤だつ」と一緒に大根を漬け込んで色を出したもので、中心がまだ少し白く残り、周辺が赤く染まったときが食べ頃であり見せ頃である。食卓の最後を華やかに飾る演出ともなる。
その他、白い大根と赤い蕪、青い蕪菜を切り込んだ「切り漬け」を、漬け物樽に張りつめた氷とともに丼に山と盛り、暖かい炬燵にホッコリと入って食べるうまさは、又格別である。
 漬け物は、ふるさとの顔でもある。

  • 手伝の 来しより漬菜 あわただし     高浜虚子