「鴨猟」

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「 鴨猟 」
 木枯らしが吹き始めると、木曽川や西山などに不凍湖川を求めて北の国から鴨が渡ってくる。鴨は大変警戒心が強いが、又一面不思議に人間を識別する能力がある。鴉が鍬を持った人は恐れない様に、鴨は釣りをする猟師か、鉄砲を撃つ猟師かを知っていて、釣り舟にはさほど警戒をしないと云う。利口な人間はそこを利用する。鴨の群の風上に舟を進め、釣りを装って竿を出し糸を垂れて風のまにまに鴨に近づく。そして・・・。  鴨猟は又、「寄せ」が面白い。薄暗い夜明けか夕暮れがよい。鴨笛を吹き、囮にデコイと呼ばれる木彫りの鴨の模型を浮かべて寄せる。
 一般に鳥類は色盲と云うが、鴨は二色を区別することが出来ると云うので、デコイには本物そっくりに彩色をする必要がある。
 何事にも手を抜かず、秘術を盡し、真剣に闘うのが猟であり、それが尊い命を頂く相手への、心使いと云うものであろう。

  • 鴨のたつ 重き羽風や まくらがり    小沢満佐子