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素朴な中津川伝統の菓子
小さなお菓子だから、 「中津川は栗菓子が有名ですし、栗菓子をお求めになるお客様が多いです。でも、生菓子でなければいけない時もあります。生菓子は人生の節目、生活の節目に花を添えるお菓子ですから」と、菓子職人の志津さんは語ります。誕生、お節句、入学や成人式、結婚...さまざまな場面で季節を表した和菓子が出されると、その場がぱっと華やぎます。「日本人は四季と切っても切り離せない生活をしてきました。生活の中に密着している季節感を、生菓子に表現するよう心がけています」 正月菓子 和菓子処、中津川のお菓子の中で、特に職人技が光る「正月菓子」。新年を祝い、春を喜ぶ正月菓子は、縁起の良い「松竹梅」や「鶴亀」をはじめ、春を連想させる草花をかたどったものや、干支のお菓子、そして伝統的な「花びら餅」などが作られます。ほのぼのとした温かさと繊細な美しさ、そしてはなやぎに満ちたお菓子の数々には、受け継がれた技とともに磨かれてきたセンスも感じられます。 自然の恵みと人のぬくもり。
栗菓子 江戸後期頃から、中津川で茶の湯が盛んになりはじめます。おいしいお茶に合うおいしいお菓子をと、菓子職人達が腕を競いあいました。中津川は岐阜県内有数の栗の産地。和菓子作りに最適な、甘くてほくほくとした栗は、「逸品の菓子」になり、菓子職人達の創作意欲を高めます。伝統的な栗きんとん、栗きんつば、栗羊羹はもちろんのこと、栗の味を活かした新たな栗菓子が生み出されています。 干し柿と栗きんとん 秋が深まってくると、中津川の菓子店の多くでは、栗きんとん餡を干し柿で包んだお菓子を作ります。透き通るようなオレンジ色、ころんとかわいらしい形の中津川銘菓のひとつです。「柿の実きんとん」「杣の木漏れ日」「幸福柿」「久利柿」など、お店によってオリジナリティーにあふれる名前がつけられています。秋の恵み「栗」と「柿」がつくり出す味です。 新しい伝統だからこそ
お客様の期待に応える、 二年に一度開催される「中津川菓子祭り」で、ひときわお客様の目を引きつける展示があります。それは菓子の材料を使って花や鳥などを作り上げる工芸菓子。菓子祭りが開催される年は、開催の半年以上前から市内の各店の職人が集まり、作品を作りながら技術指導を受けています。中津川工芸菓子会館では、今までに作られた工芸菓子作品を常設展示。中津川での工芸菓子の歴史はまだ浅いのですが、どの作品にも繊細な和菓子作りで培った職人技を見ることができます。 これは本当にお菓子なの? 「菓子祭りが近づくと、『今年は何をつくるの?』と聞かれます。それが作品作りの原動力です」と語るのは、「七福」の安藤隆生さん。中津川工芸菓子の若き指導者です。「先代に教えていただいた技術を、後輩に教えるだけ」と話しながら、平らの花びらに手を加えると、次第にボタンの花びらに。まるで花びらに命を吹き込まれたかのよう。受け継いだ技術を継承していくことは、新しい技術を生み出すことと同じくらい大変なこと。「全国レベルの工芸菓子が作れるよう、みんなでがんばっていきます」菓子処の職人としてのプライドを感じます。
朴葉もち・からすみ 今では有名和菓子店や専門店で作られている「からすみ」「ほうばもち」ですが、もともとは各家庭で作られていた、お母さんの手作りお菓子でした。からすみは桃の節句、ほうばもちは端午の節句に、子ども達の健やかな健康幸せを願って供えられました。富士の形をかたどったからすみは、黒砂糖やよもぎ、桜、クルミ、栗など味のバリエーションが広く、オリジナルの味のからすみを作っている店もあります。朴の葉は、1本の枝先に数枚の葉をつける特徴があります。その特徴を生かしてお餅を包む店もあれば、葉を一枚一枚ていねいに切り取ってお餅を包む店もあります。 |
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発行:岐阜県中津川市 |