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東濃ひのきと御影石の里
木の文化、石の文化

良質な素材が人を魅了する
 緑豊かな中津川市は、木材と石材のまちです。
 裏木曽と呼ばれる中津川北部は今から400年以上前から日本屈指の木材産地として知られ、20年に一度行われる伊勢神宮の遷宮のたびに、御神木として加子母の山から桧が切り出されています。また江戸時代には尾張藩の政策から、乱伐をさけるためにヒノキ、サワラ、ネズコ、アスナロ、コウヤマキは「木曽五木」として保護されてきました。それは、「桧一本首一つ」つまり、木を一本盗木すれば首を一つ刎ねるという厳しいものでした。こうして育てられた桧のうち良質材が東濃ひのきの銘柄で高級建築用材として全国に売り出されています。
 蛭川から苗木にかけては、御影石の産地として知られ製品として加工され全国に出荷されています。
 良質の御影石は、芸術家を魅了。毎年行われる「石彫のつどい」には、全国から石彫作家が集まります。

人生の何倍も生きてきた木と向き合う

東濃ひのきの曲物

 「底板のサワラと側面のヒノキを合わせるのが、一番難しいです。ゆるければ隙間ができるし、きつければ割れてしまいます」と語る早川松雄さん。「コツを掴むのに、十年はかかります」この道35年の匠は、あっという間にお櫃を作り上げます。最近は側面をつなぐために使う桜の皮が手に入りにくくなり、代用品を使う曲物が多い中、早川曲物の製品は桜の皮を使います。そのため、料亭やホテルの一流料理人からの注文が絶えません。「やっぱり本物にしか出せない味があるのでしょう」使う人の気持ちになって曲物を作る、それが松雄さんの信条です。かつては曲物を作る人が百人ほどいたのに、今では数人になってしまったとか。「跡を継ぐ人がいない」その中で息子の勝利さんが、父であり師である松雄さんの跡を取ります。



山と水を守り未来に残す森林づくり

 岐阜県は、全国でも有数の桧の産地です。その中でも裏木曽の「東濃ひのき」は、最高級の木材として昔から知られていました。古くから伊勢神宮の神宮備林があり、20年に一度行われる遷宮造営に使われる木材を育ててきました。今も遷宮の時には、樹齢300年〜400年という巨木を出材しています。徳川時代には御用材出材地として、駿府城や名古屋城の造営に出材。現代では法隆寺金堂や皇居、姫路城などの造営に当地方の桧が使われています。
 高級木材の産地 中津川には、杣の里として栄えた時代、尾張藩の山林保護政策に苦しんだ時代など、山と木と人が築いた歴史があります。その歴史は現代の杣人の心に宿っています。

よみがえれ名古屋城本丸御殿
江戸時代初期の創建時には裏木曽の山から木が伐り出されました
本丸御殿は、名古屋城築城当初からの文献が残っているほか、明治以降の多くの写真、さらに昭和初年の実測図など豊富な資料が残っており、ありし日の姿を木材で忠実に再現することが可能です。復元される本丸御殿は、障壁画、彫刻欄間などで飾られた室内を常時観覧することができ、文化行事や当時の生活体験などが出来る場所として幅広く活用される予定です。

喜を知りつくすこと、
それが木地師の仕事


 木製品の町として知られる坂下で、三代に亘ってろくろ製品を製造している小椋製盆所の小椋幸治さん。大学卒業後サラリーマンをしていましたが、12年前に生まれ故郷坂下に戻り、家業を継ぎました。「どうやら小椋家は、代々木地師の仕事を生業にしてきたようです」
 小椋製盆所の製品は、どれも一本の木から作る無垢のもの。「使う方に喜んでいただきたい、だから原木を仕入れて製材から製品作りを始めます。これはろくろ製品を作る者としての責任だと思っているので、誰にも任せられません。だいたい樹齢200年から300年の木を使うので木取りには神経を使います」気が遠くなるほど長い年月をかけて育った木。だからこそ真剣に製品作りに取り組みます。「気には入っているキズはどこで止まっているのか、どう削れば避けることができるか、これは経験とカンです」木を知りつくした木地師によって磨き上げられた製品は、どれも美しい木目を見せます。「失敗の数だけ腕を上げます。でも自然の恵みですから、むやみと失敗をする訳にもいきません」一生物として買っていかれるお客様の顔を思い浮かべながら、200年の歴史に挑みます。




技術に裏付けされた信頼のブランド


 世界中のアーティストが愛してやまない「Takamine」のアコースティック・ギター。この名器を生み出す高峰楽器製作所、今から半世紀ほど前に坂下で初声をあげます。2005年に創業を始めたタカミネ新工場は、CNCルーターやレーザーカッターなどの最新工業ロボットを使いながら、クラフトマンがノミやカンナを用いて仕上げ、世界最高レベルのギターを年間2万4千本ほど生産しています。
 タカミネギターと言えば、エレクトリック・アコースティック・ギター(エレアコ)と、精緻で美しいインレイ・ワーク(象眼技術)。世界に先駆け開発したエレアコの登場で、大ホールのコンサートでも美しいアコースティックサウンドを奏でることができるようになりました。「ギターに求められるものは、音の美しさだけではありません。弾きやすさや火足立の美しさなどもあります。弾く人の五感に語りかけるギターでなくては・・・」と語る、工場長の水谷宏幸さん。「音楽の幅を広げる提案をしていくのも、楽器メーカーの重要な役割」と続けます。タカミネのギターはすべてギター作りに適した輸入材。そして製品の八割が輸出されます。世界から集まった木材を坂下でギターにし、そして世界に旅立っていくのです。



素材と向き合い、作品をうみだす

蛭川の御影石
夏の風物詩となった「石彫のつどい」。全国各地から訪れる石彫作家たちが創る作品は歩道や公園、学校などに展示され、人々を楽しませます。

イ草人形
畳の原料となるイ草で作られた心安らぐ作品です。岐阜県郷土工芸品に指定されています。

夢久蔵織
久しく蔵に眠っていた布に夢をもらう
 米と養蚕を組み合わせた農業と、林業で生きてきた小さな山里のの川上に手機織りの音が響きます。道の駅「五木のやかた・かわうえ」を中心に活動する夕森工房いと車では、古布を細く裂いて織る裂織りに、「夢久蔵織」と名付け、バッグや敷物などを制作しています。この名前は川上では使わなくなった古布「むくぞ」と呼んでいたことに由来します。かつては着物や布団として大切に使われていたむくぞ。一度目の役目を終えた布をよみがえらせる夢久蔵織には、使い込まれた布だけが持つ優しさとぬくもりがあり、手にしっくりとなじむ独特の柔らかさがあります。

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発行:岐阜県中津川市